忘れ物
奥沢2丁目 長瀬 幸枝

第15号 2004.4.15

 奥沢に引っ越してから、もう十年になりました。「とに角 三つの私鉄の駅へ十分以内で行けて それぞれ JRに連絡しているのよ。」と説明すると、友人は驚いた様子で、とても信じられないといった感じです。ここは大変便利な所です。その上他の町から戻り、緑が丘の駅頭に立って我が家に向かう道を歩き出すと、まず 緑の豊かさに感動してしまいます。お手入れの行き届いた左右のお宅の生垣から、大切に植えられた木々の枝が冬空にくっきりと浮かび上がり、常緑とは云え、 冬とは思えない緑を豊かに湛えています。

 お正月が過ぎ、まず春の魁の梅の花が咲き、続いて椿、沈丁花、辛夷、木蓮等、次々に咲き始めます。歴史を感じさせる見事な桜の木に花々が咲き揃い、そして舞い落ちる頃、この道の傍らに花びらの帯ができ上がります。夏には欅の大樹の陰に吹き寄せる風の何と涼しいこと。小鳥たちも枝から静かな道に降りて遊んでいます。憎まれ役のカラスが、繁殖期には身幅の数倍もある小枝を口にくわえて、この大樹の枝先きを目ざして舞い上がる姿が見られ、健気な鳥達の営みに心が打たれます。

 秋になると、色とりどりの落葉が道に広がり、その美しさにうっとり。家に頂いて帰ることも有ります。今は葉を落とした欅の枝に丸い籠のようなカラスの巣が三つ、夕焼けのそらにかわいいシルエットを現しています。こうして私達は、様々な変化を季節を追って楽しませて頂く幸せを、心から感謝してもしきれない気持です。

 最後に、この素晴らしい道に一つ残念な事が有ります。それは道のあちこちに、ワンちゃんの忘れ物が多い事です。美しい木や花を味わいながら歩いていたら「あっ」と云う事のない様、くれぐれもお忘れ物の無いようにお願いしたいものです。     

※三月八日カラスの巣は取り除かれました