久しぶりの奥沢
 奥沢2丁目 市橋 由利

第54号 2014.2.20

 住み慣れた奥沢を1978年に後にしNYに渡ってから早くも35年、母の怪我、病気を機に懐かしいこの町に戻って来ました。世代交代もあるものの、ご近所はお馴染みの皆さん、又昔同様 “ちゃん”付けで暖かく迎えていただいてます。

 実際に家の管理をするはめになると、実家に遊びに来ていたのとは大違い、逆カルチャーショックあり、浦島現象ありでエピソードには事欠かない新鮮な毎日です。 

 NY のマンハッタン島には基本的に一軒家は存在しません。ブラウンストーンとかタウンハウスと呼ばれる3−4階建てのものがありますが、隣の家と壁を共有する形でせいぜい猫の額のような裏庭があったり、と言った具合です。多くの人は高層のコンドとかコープと呼ばれるアパート住まいです。ですからわずかでも庭付きの一軒家は有難く、そこから醸し出される季節感には退屈する暇がありません。あと一つ、殊の外感激しているのは、洗濯物を太陽の下で干せること。日本に住まわれている皆さんには当然至極のことですが。

 日本は確か温帯と習ったはず。生活してみると亜熱帯の間違いではと首を傾げる事しきりです。時差で眠れない早朝4時、”ねじまき鳥”?のけたたましい金切り声とせわしく飛び交う羽音が聞こえ、目を閉じると浮かぶ景色はジャングル。電線には野生に返りまるまると肥えたインコがずらり10匹。原色とりどりの野鳥の群がるインドのよう。生活力に溢れ、時に圧倒されます。

 奥沢は交通の便も良く、自由が丘のようなヒップな街に隣接する割には、飾り気がなく、おっとりとしたホームタウンです。緑が多いことも関係あるのでしょう。先日近所の大木が鬱蒼と茂る地所がすっかり刈り上げられ更地になり、周りの景観にあった深い陰影が消え、唖然とした覚えがあります。年輪を重ねた木には特別なオーラがあり、大切にしてゆきたいものです。土とみどりを守る会の努力に感謝しながら、筆を置きたいと思います。