花とみどり
奥沢2丁目 寺田 朗子

第68号 2017.8.3

 尾山台から奥沢に引っ越して8年になります。長くお住まいの方からご覧になれば“ ほんの新参者 ”ながらも、「奥沢のよさ」をしみじみと感じています。越して間もないころ、横道を曲がったところに看板が立っているのに気が付きました。「あら?」と立ち止まってみると、何か懐かしい思いを呼び起こす風情のお宅の写真がいくつも貼ってありました。海軍村という言葉もそこで拝見しました。家並みの雰囲気などが何か違う、と感じていましたが、独特の歴史のある街なのだと改めて知りました。

 家を建てるにあたってどんな庭にするかとイメージを浮かべながら、ご近所をずいぶんと散策しました。窓の周りにかわいいバラが絡んでいるお宅、立派な大木のあるお庭、春先の香りを思わせる沈丁花の植込み、密に育っている生垣、いたるところに置かれているかわいいセージの鉢植え…最近は見ることの少なくなった「垣根の 垣根の 曲がり角」という眺めでした。そして見回りをされている貴会の皆さまのお姿に心打たれました。

 我が家では数本の木は新たに植えたものですが、あとは思い出に絡むもののパッチワーク状態です。前の家から持ってきた木犀、日陰で咲くことのできなかった百日紅、父の実家から持ってきたこでまり、実家に咲いていた鈴蘭、いただいた右近桜、拾ってきたバラが4種類、寄せ植えでいただいた小さな松も目立たないように植えたのに大きくなってきています。それでもどの木や花を見てもどれにも思いが残っているものばかりです。いとおしんでいきたいと思います。

 一つ気になっていることが。昨今は建て替えられるお宅も多く見受けられますが、「雀たちのお宿」となっている葉の茂った中木が切られることを多く目にします。あの角でもこのお庭でも夕方雀たちのにぎやかなさえずりが聞こえていたのに、その「お宿」の木がなくなりました。あの子たちはどこに行ったのでしょうか?  この町がいつまでも「さざんか さざんか 咲いた道」と歌いながら歩きたくなるところでありますように。