木に遊ばせてもらって
奥沢1丁目 和田 好茂

第69号 2017.10.30

 9年間東北の花巻で勤務し、やっと奥沢に戻ってまいりました。定年になったら手仕事を思う存分やるのが夢でしたので、奥沢文化祭で見た「浄彫会」の門をたたき仏像彫刻を始めることしました。木彫など自分にできるのだろうか、仏像とはどんなものなのだろうか、不安はありましたが始めて見ると、仏像彫刻はとても理論的で、現役時代のノウハウが活かせることに気づきました。髪の毛の生え際から唇の下までの長さの10倍が仏像の全長、腕の長さ、手の長さなどそれぞれの寸法が決まっておりルール化されています。仏様には人々をもれなく救うため に指の間に水かきのような幕(綬網、まんもう)があり、足は偏平足で如来様の足の裏には教えを表す模様(千輻輪、金剛杵、など)があります。

 面白い話もあります、寅さんで有名な帝釈天は女たらしのプレーボーイでお釈迦様にバツとして額に女陰の痣を付けられその後改心したそうです。愁いを持った面差しで有名な阿修羅は戦闘の神で、かなり乱暴者であったが改心して仏の従者になったようです。子供をさらって喰らった鬼子母神が子育ての守り本尊になるなど、仏様の弟子達はヤンキーのようにツッパリで、乱暴者だったり、さんざん悪さをし、改心した者が多いようです。よく聞かれることですが、仏様には性別はありません、女性のように見える観音様も同様です。

 まだまだ面白いお話がありますが、それはさておき、仏像彫刻の用材は、ヒバ、檜、楠などが一般的です。白色で彫り易く木日の詰まった木曽檜が最適です。北斜面でゆっくりと数百年かけて育った木を彫らせたいただくわけですから人事に彫らなければなりません。また木の中に隠れておられる仏様にお出ましいただくわけですから、失敗したといって途中で放り出さずに何とか手直しして仕上げています。

 次に大事なものが刃物です。削るとは刃物の形状を木に写しているわけですから、切れない刃物では削り跡が自くなったり、刃物の欠け跡が筋になったりするので時間をかけて研いでいます。貴重な木を、心を込めて研いだ刃物で削り仏様を彫りあげてゆく過程はなにものにも代えがたい貴重な時間です。

 仏様に感謝、木に感謝、刃物や砥石などの道具を作ってくださった方々に感謝しつつ、日々、本に遊ばせてもらっています。