小さな思い出
奥沢2丁目 山中 雅之

第49回  2012.11.1

 私の幼少期の奥沢周辺について、思い浮かぶ事を書いてみました。今では三輪車などあまり街では見かけなくなりましたが、当時、幼稚園児は殆ど三輪車に乗って公園に行ったり、空き地へ行って遊んだものでした。

 そんなある日のこと、愛車の三輪車で仲良し園児同士で連れ立っていった始めての遠乗り。親からは、遠くまで行っちゃだめよ。5時になったら帰ってきなさいよといつも出るのはその言葉。それを押し切って皆で決行したあの日。皆が大事そうに手にしていたのは、カブトムシの幼虫引き換え券。当時、カブトムシやクワガタを持っていたら、ちょっとした自慢でした。行った先は奥沢のサンマート。当時私は石川台に住んでおり、サンマートまで三輪車で行くのは、園児にとっては小旅行のようなもの。サンマートは現在のトップの場所で、横にある短いスロープにペットショップがあったと思います。店内は薄暗い蛍光灯が照らしており、沢山の水槽に金魚や熱帯魚、亀や爬虫類等の生き物もいた様に記憶しています。そこで引換券と交換し、ビニール袋に入れてもらい、三輪車のハンドルに括り付け、宝物を手にした満足感とともに帰ろうとした時。帰り路を忘れてしまい、暮れゆく夕陽の中、今にも泣き出しそうな私達に優しく声を掛けてくれたのが、確か諏訪山通りの靴屋さんでした。僕たち何処から来たの?わからない、お家に帰りたい、と泣いていたと記憶しています。でもお店の人はすぐ電話をかけてくれ、間もなく各自の親が迎えにきました。今から思うと、親が三輪車に住所と電話番号を書いていたからだったんでしょうね。親って有難いですよね。迎えが来たときの、黙って遠くに来た事への反省、家に帰れる事、何より親に会えたという言いようのない安堵感は今でも忘れられない思い出です。

 今回、長く封印されていた思い出を思い起こすきっかけを作って頂いた事に感謝しております。そして現在、この奥沢の地で「奥沢やまなかクリニック」を営み、生活する事ができるのも何かの縁。感謝、感謝です。