奥沢近辺の城址と地名の謎⑥

59号 2015.4.28
その他の城址(ⅴ)赤堤城址(善性寺、または六所神社)

 今回は世田谷城北の守り、赤堤砦跡を紹介する。烏山川は世田谷城趾公園の南側を流れ、国士舘大学で深い崖線を作っているが、その北側一帯はなだらかな台地を形成している。
 その北側に小さな崖線をもった北沢川が流れている。ちょうど小田急線の豪徳寺駅北側を流れ、梅ヶ丘駅羽根木公園南で小田急線を渡り、やがて三宿・池尻の境界で烏山川と合流し、目黒川と名前をかえて、目黒・中目黒の桜並木に続いている。合流地点にあるのが前回紹介した多聞砦である。
 豪徳寺駅北側で1本の沢が北沢川に合流している。特に名前はないが、世田谷線(旧玉電)に近いところを流れていた。
 その沢と北沢川の間の台地が水田に取り囲まれ半島状に延びていて赤堤砦跡といわれている。小さな崖線なのでそれ程高低差はない。
 現在はそのまま善性寺というお寺になっている。正面に石段があり、小さな崖が続いている。すぐ西側を玉電が走っていて、線路を見ると坂になっているのがよくわかる。寺の側の踏切が付近で一番高くなっている。
 善性寺は近くの勝国寺の末寺で、奈良東大寺の良弁僧正が関東に降った際、この地に草庵をむすんで彫刻をした不動明王と伝えられるものを本尊としているので、相当古い寺であると考えられ、赤堤砦と関係があったのかもしれない。
 ただ、その先の松原駅近くに六所神社があり、そこが赤堤砦跡という説もあるが、地形的には善性寺の方がしっくりくる。
 なお、世田谷城の南には小さな沢と蛇崩れ川の合流地点に弦巻神社があり、弦巻砦跡と伝えられている。ちょうど世田谷城を中心に北の赤堤砦、南の弦巻砦と対象の位置にある。
(赤松章夫)

善性寺
六所神社
出典「世田谷の中世城塞」昭和53年度世田谷区教委編集発行(三田義治氏編集担当)